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 銀河鉄道

 小学生の頃の記憶の中に上級生が学芸会で演じた「風の又三郎」の不思議な少年の像が鮮明に残っています。 最近になって宮沢賢治の小説や詩を読んでみるとその中に鉱物の名前が出て来て宮沢賢治の童話や詩の雰囲気に畏まった様な独特な味わいを生み出している様に思います。パラパラと詩集のページをくってにると、「向こうの縮れた亜鉛の雲へ」「玉髄の雲が流れて」「砂漠でくされたダチョウの卵、確かに硫化水素は入っているし」「赤い瑪瑙のとげ」「月光は水銀」「その質は蛋白石」「仮睡硅酸の雲」「黒曜ひのき」「石英安山岩の岩頚」「孔雀の石の空のした」「あいつはかわせみだ翡翠さ」などなど。さらに、「銀河鉄道の夜」のなかには、「ダイヤモンド会社の・・・隠しておいた金剛石・・・」「この地図は・・・黒曜石で出来てるね」「芝草の中に、月長石ででも刻まれた・・・紫のりんどうの花・・・」「たしかに水晶や黄玉・・・青白い光をだす鋼玉・・・銀河の水は水素よりもすきとおっていたのです」「平屋根のうえに・・・青宝玉と黄玉・・・トパース・・・サファイア・・」と鉱物が出てきて、夢の中でジョバンニとカムパネルラは星の川とも牛乳の川とも水素の水ともつかない境地を銀河鉄道で旅をしていきます。ジョバンニとカムパネルラが最初に降り立った駅は白鳥の駅でした。若くして生命を燃焼しつくした宮沢賢治は死を前にして父に、1千部の法華経を配ることと、法華経を入れた経筒を彼の選んだ32の山に埋めることを頼んでいます。 その山を結ぶとそこには星座の形が浮かび上がってきます。 それはまさに銀河に沿った星座であり、地上の銀河は北上川なのです。 この意表をつく企ては「銀河鉄道の夜」にもう一つのスケールの大きな物語りをあたえてる様です。

  白鳥座 ---- (岩手山、駒ヶ岳、沼森、姫神山、愛宕山、岩山、鬼越山、篠木峠)

  わし座 ---- (黒森山、毒ケ森、蝶ケ森、南昌山、東根山、上ン平)

  盾座 ------ (大森山、八方山、江釣子森山、堂ケ沢山、松倉山)

  射手座 ---- (束稲山、駒形山、物見崎、飯豊山、胡四天王山、観音山、権現堂山、鶏頭山、

           早池峯山、種山、六角牛山、仙人峠、旧田野山)

 

射手座

 銀河に見立てた北上川を挟んで「銀河鉄道の夜」の旅が続く。

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北斗七星殺人伝説

 ロマンチックな童話の後に殺人事件が登場する推理小説である。星と星を線でつなぎそこに何か意味の在る形を見る星座の様に人は昔から”点”の集合になんらかの意味を見い出すことに想像力を働かせてきた。 このような不思議をスパイスとして推理小説の中で使っているのが、 「北斗七星殺人伝説」宗田理著・角川文庫だ。地上にある要の位置が星座と対応関係にあり暗号解読の面白さがある。作者が発見した歴史上の基点と歴史的事実が北斗七星の形になる。  

                            

北斗

小説のあらまし

 東京でマンションの窓から首を吊って死んでいる男性が発見されるのが発端となるこの小説は、古文書などの解読が進められていく内に、伊勢志摩地方の地上に北斗七星の図形が浮かび上がってくるという、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。 青年海外協力隊員として南米パラグアイで体育教師をつとめていた三谷凌は、二年振りに日本へ帰って来た。 帰国後連絡を取ろうとしても行方がはっきりしない大学時代の友人のカメラマン斉藤周一郎のことが気掛かりだった。 帰国前に来た彼の手紙には、面白い話があるから帰ったらすぐ連絡してくれとあったからである。 京都で古書籍を扱っている父隆次のもとに着く早々、その斉藤の妹で大学生の衣津子が、兄を心配して訪ねてきた。 彼女によると、斉藤は原発問題が起っている志摩方面へ行くと言って出掛けたとのことだった。差し当たって何もすることのない凌が、衣津子と一緒に斉藤を捜しに行くことを決めたところへ、脅迫めいた電話がくる。 それを耳にした父隆次は、斉藤が九鬼氏の埋蔵金伝説について聞きに来たことがあると凌に語った。 九鬼氏は熊野灘を舞台に勢力を振るった中世の海賊のひとつで、戦国時代の末期には織田信長や豊臣秀吉の水軍の大将格で活躍して、伊勢志摩を治め鳥羽に城を構えるまでになった。 秀吉死後の関ケ原の戦いでは、父の嘉隆が西軍、子の守隆は東軍と親子争う形になり、破れた嘉隆は答志島に蟄居ののち自刃して果てた。 その九鬼一族にまつわる埋蔵金があるのではないかというのが斉藤の話だった。 半信半疑の父隆次や凌のところへ、その斉藤が志摩の大王町から出した手紙が届く。 そこには九鬼氏ゆかりの土地と古文書を写した写真のネガが入っていて、古文書には暗号めいた文章と修験者が祈祷に使うという九字切に似たものが書かれてあった。  こうしたことは凌よりも父隆次の専門である。 文章が庚申信仰の真言ということが判明して、それと北斗七星が関係あることに気付いた隆次は、九鬼氏の家紋にも使われ修験者とも深い繋りのある北斗七星が謎を解くキーワードと推理した。 10世紀の平安貴族の間では、天の異変が国家的災難の象徴とする星宿法と密教とが深く結びついた本命星(運命を司る星)信仰が盛んになった。 そして、すでに天皇の本命星は北極星(太一)とされていた。 北斗七星の七星を北極星に近い星から、貧狼星(どんろうせい)、巨門星(こもんせい)、禄存星(ろくぞんせい)、文曲星(もんごくせい)、廉貞星(れんじょうせい)、武曲星(ぶきょくせい)、破軍星(はぐんせい)と呼んでいる。 それぞれに生れ年の支(子や丑などの十二支)を割り振って、自分の運命の属する星として重用視した。 この信仰は都から、修験道にとっては重要な場所でも在り、熊野詣で知られる南紀の熊野へは、修験者を介して伊勢志摩に勢力を誇った九鬼一族にも伝えられてと推理できるわけである。 首を吊って死んでいた商事会社社員、鳥羽の答志島で発見されたその妻摩耶のパラパラ死体、凌と衣津子への強迫、九鬼氏の埋蔵金に関係する秘密結社の有無の推理、場所を東京、京都、伊勢志摩にと事件が錯綜するなか、推理が進む中、天の北斗七星が地上に鮮やかに姿を現わしてくる。 その暗号の示す地点には小さな島があり、無人島には埋蔵金ならず麻薬の密輸入団の隠れ家があった、と言う意外な結末と成る。


参考:「銀河鉄道 魂への旅」畑山博著.PHP研究所刊、「銀河鉄道の「北斗七星殺人事件」宗田理著.角川文庫刊